書名で損をしている。著者はロシアに留学したこともあるロシアの専門家。
ロシアの行き先は東西と南しかない(北は北極で事実上進入不可だが最近騒がしい)。東はアジア、南は中央アジア(アフガニスタン・パキスタン・イラン)、西はヨーロッパ(ドイツ)。最近はドイツとの結びつきを強めている。これに反発するネオコンは両国の間にあるポーランドにMDを配備しようとしている。ポーランドは歴史的にドイツとロシアの間で苦労をしてきた国なので、米国の介入は基本的に歓迎している。
NATOの東方拡大とともに前線がドイツからポーランドへ延び、一段とロシアに近づいた。マッキンダーによると東欧を押さえなければハートランドを支配するロシアにヨーロッパを征服されてしまう。だからこそ、米国は東ヨーロッパを押さえなければならない。
ポーランドから南に下ると旧ユーゴスラビアがある。旧ユーゴの一つ、コソボ独立を支持したのは英米、反対したのはロシアだった(はず)。ここら辺の国際情勢は地政学の背景を知らないと理解できない。日本では無いことになっているので未知の領域になる。
イスラエルを中心に見ると、北はロシア、南はアフリカ、西はヨーロッパ、東はアジアに通じる。
拉致「許せない」 露大統領、強く北批判 首脳会談時
これはロシア側からのサインと見るべきでしょうかね。詳しい分析はこの本の著者(中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
)がすると思うのでそれまでは待ちましょう。
シベリア開発
「今のロシア」で語られるのはエネルギーを軸にユーラシア大陸を一つにまとめようとするプーチンの戦略がある。東はシベリアの地下資源とシベリア鉄道という弱点である。シベリアには資源はあるがほとんど投資をしてこなかった。その路線である鉄道も同じ。地図を見ればわかると思うが、ロシアはアジアの国ではなくヨーロッパの国である。心も西に向いている。だから独露関係が重要視される。天然ガス供給会社の社長は前独首相がつとめているようにドイツとロシアの関係は深まっている。そこに楔を打ち込んだのが米国のMD配備計画である。場所はドイツとロシアの間、ポーランドである。
東シベリア油田開発着手へ、平和条約置き去りの懸念
例のリトビネンコ暗殺事件の裏は、実はロシアのエネルギーマネー(+テロ資金のマネーロンダリング)と関わりがある。稼いだお金はイギリス(シティー:金融街)へ流れていく。帝政ロシアの資金もイギリスで運用されていたそうだ。プーチンはその流れを絶つために(正しく納税させるために。資源会社は優遇税制を受けていた)オリガルヒと呼ばれる新興財閥を次々に追い詰めていく。彼らはソ連~ロシアの混乱期に突如として現れた成金である。エネルギーやメディアを傘下におさめて、ロシア政界(石油ロビーがある)を牛耳っていたわけである。プーチンにとってエネルギー産業だけでなく、テレビ新聞というメディアも敵である。言論統制という表の面より、裏にいる権力闘争(プーチン対オリガルヒ)とみるべきである。
プーチン王朝
メドベージェフが次期大統領だが、院政を敷くプーチンは首相になる。ロシアの憲法では8年が任期の限界である。そこでメドベージェフを間に挟むことで2020年までプーチンは権力の座に居続ける予定である。2008~2012年がメドベージェフ新大統領で、2012~2020年までプーチンとなる。禿(レーニン)→フサフサ(スターリン)→(無かったことにしているフサフサ)→禿(フルシチョフ)→フサフサ(ブレジネフ)という法則は守られるようである。
資源外交
資源と地政学は実は関係ないという意見もある。価格はあくまで国際価格で決まっているからである。
この二冊を読めば石油のことはある程度見えてくる。ニュースでは情報として流れているだけだが、こういった知識のストックがあると見えてくる世界が違うものである。
原子力発電所
プーチン戦略の一つは原子力である。ロシアから見ると南方の国カザフスタンの下にはウランが眠っている。オーストラリアが生産量一位だそうだが、カザフスタンも重要である。日米一体化が進む中で東芝WHと日立GEなどの原子力産業の動向も目配せしておく必要がある。
日立、GEと原発で新会社設立へ
東芝、原子力大手WHを買収
ロシアの原子力職員を食わせるためにいろいろ画策したことがある。そうしないと核技術者が流出してしまうからである。核拡散という状況を自ら作り出すわけにはいかないので給料を支払うために核関連ビジネスを行う必要があった(給料の未払いがあったとか)。そこで米国と取引をしたのだがネオコンにつぶされたという。
ロシアが復活するにはどうしてもエネルギー問題を解決しなければならない。設備が古く更新が必要で、また発展のために必要な電力をまかなうにはあと5割増しの電力を供給できるだけの設備が必要である。伝統的にエネルギー産業に依存してハイテク産業がない。軍事関連産業は強いが安いだけが取り柄という話もある。ロシア版GPSなどの軍事技術を民間に開放するという話もある。産業のハイテク化がプーチンの残された課題というわけである。
ざっと体調不良の中読んだだけなので間違いがあるかもしれません。なかなか面白い読み物でした。まさに今がわかる本です。書評というか読書日記だけ別のブログに移動(コピー)させよか考え中。
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